メロディー
宮古島は毎日優しい色をしている。
雲の白と灰色のコントラストの隙間にわずかに覗く滲んだ空色。
水平線で半分に切り取ったみたいに視界一面のサトウキビ畑の緑が南からの風に揺れて音を立ている。
黄色い太陽が
僕らの肌を焦がして
ねずみ色のアスファルトは濃い影を地面に刻んで行く。
甘いめまいに似たノスタルジックが
ふいに湧き出て
遠い夢の中の物語のヒロインのように
美しい髪がこちらを見て笑っている。
振り向く前に消えてしまう
ここは悲しみの果てみたいだ。
長い長いあぜ道をマリンシューズで駆け抜けて行く
黒い犬が横切って
サトウキビ畑に消えて行く。
誰かが拾って捨てたサンゴの抜け殻が、
砕けて道に白い点を付けている
海に帰るのは
いつになるだろうか。
あの青いエメラルドの大海原に
雄大に築き上げられたサンゴと魚の王国に。
水中マスクと足ヒレをつけ
大型旅客機になってその上空を通過する
。
驚きと警戒でその鮮やかな住居に身を隠す者。
こちらに気づかず意中の恋人を追いかけ回す者。
まるで人に慣れてるかのように
眼差しをこちらに向けて遊覧する者。
そのどれもが、多種多様な色や模様や形を成して暮らしを彩っている。
波に押し返されて旅客機は引き返す。
空気の泡を螺旋回転させながら
裸足のビーチに帰って行く。
僕らの住む世界はこんなに違うのに
僕らは当たり前の隣人だ。
重たい重力を感じながら
風の声がそう囁いているようだった。