思い出日記4

思い出日記4

海の声

深い深い海の底まで僕は潜れない。

 

ちょっと深い。

くらいまでなら潜れる。

 

 

珊瑚礁は、魚の共同住宅

僕たちはその世界の空からやってくる。

 

不思議だ。

水中に潜っているのに、感覚は空から降って行くようだ。

 

今日もたくさん海に潜った。

噛む魚がいるのを知った。

小さいけどほんとに、ツンツンつついて来て生意気だ。食べるぞ。

でかいのもいるらしい。こわい。

 

 

下まで潜って、

見上げながら低空飛行を続ける。

雲と雲の隙間から太陽の光が天使の梯子を降ろすように

水面の揺らめきの隙間から

いくつもの光の梯子が降りている。

太陽の光は世界に温もりと彩りをくれる。

それを見上げながら

キラキラと光る水面に向かって一気にゆっくり上昇する。

上に行くにつれて水温が変わる。

一番暖かい層に到達した時、シュノーケルの先は僕らの住む世界に突き刺さってたっぷり入った海水は無数の粒になって吹き出される。

 

ブゥーっ!と

水を吹く瞬間はクジラの気分。

 

息が続くならずっと潜っていたい。

 

窮屈な外の世界よりも、

なぜか、ここは暖かい気持ちになる。

魚たちは、どんな気持ちでそこに住んでいるのか。

 

ただ当たり前に身を委ねて

生命を全うしているに過ぎないのか。

 

小さな魚の群れの中を

牙が生えた大きな魚が横切って行く。

 

多様性という言葉の本当の意味は実はよくわからない。

だけど僕らがその言葉に求める温もりのようなもの、本当にみんなが幸せになるための自然の一歩のような。感覚。

 

それが、ここに少しあるような気がして暖かいんだ。

 

彼らは水中の生物

僕らは空の住人。

 

不思議だね。

狩るか狩られるかの世界も含まれているこの世界に

強い白い光は濃い黒い影を落とすけれど、こんなにも暖かくて尊い

 

この先また会えるかもわからない隣人たちに別れを告げて今日もまた空に帰って行く。

 

君たちの世界の空気は

僕らの世界では乾くと肌にベタベタにはりついてやっかいだ。 

真水というもので洗い流すんだ。

 

 

真水最高。

すぐそこに真水シャワーがある高級ビーチ最高。

 

 

 

それにしても、

あんなに綺麗な海を我が物顔で私物化してる高級リゾートってやつはなんなんだいったい。

すぐそこでまた新しい開発を進めてガンガン岩を砕いて平地にしている。

 

 

高級ビーチの海は

家族連れが泳ぐような場所は薄く濁って汚くて

サンゴも死んでいる。

 

そこから少し泳いで沖にある大きな岩のところまで行くと、深さと透明度は増して

魚とサンゴの王国がまだ少し生きている。

 

あの硬いショベルカーの歯が

いつかこの尊い世界も壊してしまうのではないかと不安になった。